教授挨拶

当研究分野は平成17年1月に脳生命科学分野(大学院医学系研究科担当)として発足いたしました。 それまでは宇宙医学実験センターの直線加速度解析装置が設置されていた研究室を実験室として割り当てられた事もあり、発足直後は実験台もwet ラボの設備もいっさい無く、天井ばかりが高いがらんとした中央実験室(N101)で一人掃除をしていたのを記憶しています。その後約3ヶ月で基本的な実験室のセットアップを行い、実験台、培養設備、動物飼育設備、測定器等を整備しました。平成17年4月には助教小野健治、秘書高橋美枝が着任して研究がスタートしました。当初はいろいろと不自由な研究生活でしたが平成17年7月にNEDOの大型プロジェクトに採択され、現在保有している特殊装置の大部分を導入することができました。平成18年4月には研究所改組に伴い分野名が脳機能分野に変更になりました。平成21年3月にはもう一人の助教として鈴木弘美が着任し、ようやく3名のフルスタッフで一丸となって研究にあたる事ができるようになりました。

平成17年1月当時の中央実験室(101)

平成17年1月当時の中央実験室(101)

当研究分野では独自に開発した脳を標的化したドラッグデリバリシステムや新規なイメージング技術、単一細胞分離解析技術などを用いて、脳の機能の発現を形態形成や細胞構築の面から明らかにし、記憶情動などの高次脳機能の発現のメカニズムを遺伝子レベル、細胞レベル、個体レベルで調べること、さらにはそのような機能を人為的に操作する技術の開発にもチャレンジしています。このような研究を通じて脳疾患の包括的治療法や診断法の開発や新規薬剤の創成に応用していく事を目標としています。

私たちはこれまで産業界とも密接に連携し、私たちの研究を通じて医学における基礎研究の重要性について特に痛切に実感しています。基礎医学研究が現代の医療の土台のある部分を支えていることは事実ですが、同時に研究成果の臨床面への応用の方向を決定するのは医療に従事するかたがたであると考えています。医療と研究の両立をめざして力を合わせて研究を続けて行きたいと考えています。

平成23年2月 澤田 誠