プロトコル

主なプロトコル

  1. 株化ミクログリアの培養
  2. ミクログリアサブタイプの分離法
  3. 「特定細胞分析技術+座標再現機能」搭載レーザーミクロディセクション顕微鏡による組織切片中からの単一細胞の分離法

1.株化ミクログリアの培養

ミクログリアの株化細胞はこれまでにいくつか報告されていますが、これらの細胞はマクロファージ様性質が強く、またがん遺伝子や遺伝子変異をもっているため細胞の増殖の調節が難しいなどの欠点があったようです。これに対し私の樹立した株化ミクログリアはprimaryから樹立した細胞で、増殖因子依存的に増殖し、因子非存在下では増殖能を失い分岐したミクログリアの形態(通常の脳内で見られる形態)をとるため、生体内でのミクログリアの性質を培養下で再現できるという特徴があります。また一次培養から分離できる複数のミクログリア亜集団に酷似した性質を示すものも見受けられることもあって、ミクログリアの亜集団の脳内での性質や役割を調べる上で有用であると考えられます。

マウス株化ミクログリアは性質の異なる複数の株化細胞を、ラットでは増殖脳が良い1種類の株化細胞を樹立しています。これらの細胞は種々の特異的な性質を示すため、以下の特許を取得しました。
(以下の特許は2010年に株式会社ACTGen社に譲渡し、2011年よりコスモバイオより販売されます)

国内特許

  • 登録番号:特許第3410738号(特願H10-538383)
  • 発明の名称 :ミクログリアからなる医薬用キャリアー
  • 登録番号:特許第4387108号(特願2003-679)
  • 発明の名称 :株化ミクログリア

米国特許

  • 登録番号:6,673,605(出願番号:09/180,394)
  • 発明の名称:株化ミクログリア及びその利用

ヨーロッパ特許

  • 登録番号:0949331(出願番号:98905808.6)
  • ヨーロッパ特許指定国 :CH/LI,DE,FR,GB,IT
  • 発明の名称:株化ミクログリアおよびその利用

本プロトコルでは我々の樹立したミクログリア株細胞の培養法について説明しています。

2.ミクログリアサブタイプの分離法

ミクログリアにはサブタイプがあり、現在までのところprimaryから少なくともtype Iとtype IIという2種類の性質の異なった分画をsortingする事に成功しています。type Iとtype IIの違いは、たとえばMac1の発現(ラットではOX42にあたる)の強弱、骨髄細胞の分化マーカーであるERMP12の発現の有無、刺激に応じた形態変化、増殖因子依存性、サイトカイン産生能、貪食能、表面抗原、発現タンパク質の違いなどがあります。 このプロトコルは混合グリア培養からtype Iとtype IIのミクログリアを分離する手法について説明したもので、「Protocols for Neural Cell Culture 4th eds, Ch 13」で公開したものの一部です。

3.「特定細胞分析技術+座標再現機能」搭載レーザーミクロディセクション顕微鏡による組織切片中からの単一細胞の分離法

組織サンプルからの核酸・タンパク抽出技術や遺伝子増幅技術の発展により、癌や神経変性疾患などの疾病に関与する遺伝子・タンパクの探索や発現解析の研究が盛んに行われています。しかし、病態組織のサンプルには相当数の正常細胞も含まれているため、調製したmRNA やタンパクには病態由来のものと正常細胞由来のものとが混在したものになります。そのサンプルを用いて、遺伝子・タンパク発現解析を行った場合、病態に対する特異的な挙動を本来示しているはずの遺伝子やタンパクを見逃してしまう可能性があるため、より正確な細胞特異的遺伝子・タンパク発現解析を行うには、目的とする細胞のみを単離する必要があります。 このプロトコルは、当教室で開発した高解像度画像解析装置を自作の座標再現装置と連動させた「特定細胞分析技術+座標再現機能」搭載レーザーミクロディセクション顕微鏡」を用いた高解像度組織・細胞画像解析とその数値データに基づいた目的細胞の座標同定、さらにその座標データを用いて座標再現機能を装着したマイクロディセクション顕微鏡による半自動操作により採取・分離する技術について説明しています。

本装置により切り出した組織中のGFP陽性細胞の例