研究テーマその3

LMD-MS法:3D質量分析イメージング

(1)座標再現機能を利用したLMD-MSイメージング

・組織切片中の隣接する細胞をレーザーマイクロディセクションで切り出し、フィルム上に質量分析計のレーザースポット径より離して再配置することにより、切り出した個々の細胞の質量分析が可能になる。

・さらに、個々の細胞小片は位置座標データを持つため、質量スペクトルの定量値を組織画像上にマッピング表示できる。

・これらの操作を一括して管理、画像化できる「座標再現機能および装置」を開発し、簡便で安価な質量イメージングを可能にした。

(2)LC-MSイメージング

・私たちは座標再現装置とリキッドハンドリング装置とを同期させてLC-MS装置用サンプリングの全自動化を目指した機器開発を行っています。



 -酵素反応などのマルチリアクション実現

 -LC-MSで質量分析イメージング実現

 -最大空間分解能1μmの実現

 -既存の質量分析計(汎用機)を高分解能質量イメージング装置として利用

(3)脳組織中の高分子ペプチドの3D質量イメージング

・アルツハイマー病モデルマウス海馬において病因物質のAβモノマー(MW 4329)と2量体(MW 8658)の3次元分布を調べ、両者の細胞レベルでの空間分布が異なることを発見した。

・モノマーと重合体の分布の違いから、病因物質が量産される場所(細胞)と毒性を発揮する重合体の生成場所(細胞)が異なることを世界で初めて検出した。

(4)脳組織中の薬剤分布の1細胞レベル詳細検出

・痙攣誘発薬剤のピロカルピンは投与後10分で脳内濃度が飽和するが、作用が30分以降に出現する。

・痙攣に関与する海馬近傍の1細胞の薬剤濃度を測定した結果、作用点となる神経細胞での薬剤濃度が投与後30分で飽和量の約20%、細胞近傍の飽和は投与後1時間であることがわかった。

・正確な薬物動態の評価には単一細胞レベルでの解析が必要であることを示した。